教育勅語を幼稚園で唱和することは違法なのか

教育勅語(教育ニ関スル勅語)を教育機関で使用することは、記憶している限りでは、禁止されていると思っていました。
最近よく話題になっているのに違法性に関しての言及はなく、なんだかはっきりしなかったので改めて調べてみました。

結局、明らかな違法性はないという結論に至りました。
ただし、運用方法によっては違法性はあるものと考えられます。

本

法律の専門家ではない、教職課程を履修した一般人の意見です。ご承知おきください。

『教育勅語』に関して

明治天皇が、教育に関して発した勅語のことです。
1890年(明治23年)10月30日に発布され、第2次大戦後の1948年(昭和23年)6月19日に廃止されました。

書いてあることは、当時の教育に関する基本方針です。
天皇の言ったことですから、当時の国家、国民は、これを守らなくてはならなかったのです。

日本国憲法施行(1947年5月3日)後、衆参両院にて違憲であると解釈され、上記のとおり廃止決議に至っています。
GHQからのお沙汰があったみたいですw

違法性を解釈してみる

教育勅語そのものは違憲であるものの、教育の場で唱和することに違法性はないと考えられます。
ややグレーゾーンでしょうか。取り扱い方によっては、黒です。

ここでは、幼稚園という教育機関でのことを前提に考えます。(話題になっているのでw)

教育勅語は違憲

衆参両院の決議文書から、教育勅語が違憲であることは明白です。

ただし、違憲であるからと言って、唱和してはいけないという決まりはないのです。
日本国憲法の精神に則っていないものとして、史料のようなかたちで教材とすることに、違法性はありません。

ちなみに、奉読や神格視はやめることになっています。
もし教育勅語に対して礼をしていたり他の文書と明らかに異なるかたちで取り扱っていたりする場合は、違法性が疑われます。(思想信条の自由が関わってきます。)

教育勅語等排除に関する決議(衆議院)

衆議院のHPでは対象文書が見つけられませんでした。ちょっと不安になります。。
別のところから文章はいただいてきました。

民主平和国家として世界史的建設途上にあるわが国の現実は、その精神内容において未だ決定的な民主化を確認するを得ないのは遺憾である。これが徹底に最も緊要なことは教育基本法に則り、教育の改新と振興とをはかることにある。しかるに既に過去の文書となっている教育勅語並びに陸海軍軍人に賜わりたる勅諭その他の教育に関する諸詔勅、今日もなお国民道徳の指導原理としての性格を持続しているかの如く誤解されるのは、従来の行政上の措置が不十分であったがためである。

思うに、これらの詔勅の根本的理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すものとなる。よって憲法第98条の本旨に従い、ここに衆議院は院議を以て、これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言する。政府は直ちにこれらの謄本を回収し、排除の措置を完了すべきである。

右決議する。

教育勅語は過去の文書であり、日本国憲法の精神(特に基本的人権の尊重)に反しているとしています。
また、教育勅語を指導原理とすることを否定しています。

この議決で排除が確認されています。

教育勅語等の失効確認に関する決議(参議院)

参議院のHPに掲載されています。

われらは、さきに日本国憲法の人類普遍の原理に則り、教育基本法を制定して、わが国家及びわが民族を中心とする教育の誤りを徹底的に払拭し、真理と平和とを希求する人間を育成する民主主義的教育理念をおごそかに宣明した。その結果として、教育勅語は、軍人に賜はりたる勅諭、戊申詔書、青少年学徒に賜はりたる勅語その他の諸詔勅とともに、既に廃止せられその効力を失つている。

しかし教育勅語等が、あるいは従来の如き効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんばかり、われらはとくに、それらが既に効力を失つている事実を明確にするとともに、政府をして教育勅語その他の諸詔勅の謄本をもれなく回収せしめる。

われらはここに、教育の真の権威の確立と国民道徳の振興のために、全国民が一致して教育基本法の明示する新教育理念の普及徹底に努力をいたすべきことを期する。

右決議する。

日本国憲法の精神に基づいて制定した教育基本法の考え方に反しているという論理なので、3段論法で違憲と解釈できます。

この議決で、失効が確認されています。

教育勅語等の失効確認に関する決議(第2回国会):資料集:参議院

信教の自由

教育勅語は、天皇が発した言葉です。
天皇は、神道(皇室神道、宮中祭祀)の中心人物なのです。

すると、教育勅語は神道教義的であると言えます。

ということは、神道を信じていない人に教育勅語を読ませることは、日本国憲法第20条で定める信教の自由を侵していることになります。
違憲行為です。

この論理が通用するのは、無理やり読まされたみたいなときだと思います。
自分から進んで行なったことであれば、違法性はありません。

小さな子に、自発的という理論は通用するのでしょうか。。

天皇思想の過剰関与

そもそも、天皇の言葉を教育の柱とすることは、個人の考え方の押し付けになる恐れがあります。
これは、教育の中立性が保たれない可能性につながることです。

教育委員会がどう判断するか、というところになるのでしょうか。

繰り返し何度も唱和するとか暗唱するとかいったことだけでは、なんとも言えないのでしょう。
平家物語や源氏物語の暗唱とどう違うのかと言われると苦しいところです。

ちなみに、日本国憲法の前文もよく暗唱されていそうですが、こちらは国会で決議されているものですので、教育勅語とは明らかに性質が異なります。

違憲だと国会で決議されたものを積極的に覚える暇があったら、他のことを覚えた方がよいとは思います。

本

まとめ

繰り返しになりますが、教育勅語は違憲ではあるものの、教育機関で教材として利用することは違法ではありません。
もし、奉読や神格化した取扱いがあれば、違法と言われる可能性があります。

ただ、違憲と言われているものを積極的に指導の柱にするのはどうかと思います。
あくまでも『教材としての利用』にとどめるべきだと考えます。
つまり、過去にあったよくないことの具体例として、反面教師としての教材利用です。それ以外の利用法は考えられません。

参考資料

教育ニ関スル勅語 – Wikipedia

文部科学省 [トップ > 白書・統計・出版物 > 白書 > 学制百二十年史 > 概説]

日本国憲法
law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html

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  1. 非実在中年 より:

    私も同じような疑問を抱いたので、ググッた所、こちらのサイトにたどり着きました。

    とてもわかりやすい、説明と文章をどうもありがとうございました。
    すっきりしました(^^)

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